2024.11.01

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⽣徒・保護者を満⾜させる受験指導のポイント(1)

2学期も中盤を過ぎ、⼊試に向けて追い込みのシーズンとなってきます。⼦どもたちの将来に向け、⼀⼈でも多くの⽣徒をそれぞれの志望校に合格させることは、塾の⼤切な役割の⼀つです。では塾の受験指導において、⼀体どのようなことに気を付けていったらよいのでしょうか。今回は、⽣徒と保護者に本当に満⾜してもらえる受験指導について、具体的に考えていきましょう。

受験指導は塾の喜びであり、評価の指標である

努⼒して志望校に合格した⽣徒とその喜びを分かち合うことは、塾教師として最⾼に幸せな瞬間であり、仕事の大きなやりがいを感じるところでしょう。⼊試を控えた受験生の指導に携わる先⽣⽅にとって、いよいよ指導者としての真価を問われるときとも⾔えます。

そして何よりも重要なことは、そういった受験の合否結果そのものが、その塾に対する世間のはっきりとした評価の基準になり得るということです。とは言え、必ずしも地域のトップ校の合格者が多いことだけが評価の対象になるわけではありません。

塾によって指導の⽬的や⽣徒の学⼒レベルはさまざまであり、トップ校合格者は少なくても、常に地域から支持され、春の募集時期には毎年⼊塾待ちの⽣徒が出る塾もあります。逆に、多くのトップ校合格者を出しながらも、⽣徒や保護者との意思疎通に失敗し、「あの塾は進学実績稼ぎに無理な受験をさせる」といった悪い噂を⽴てられてしまうことさえあるのです。

⼊試に向けた対応といっても中学⼊試や⾼校⼊試、そして⼤学⼊試ではそれぞれ考え⽅も対応も、大きく異なります。ここからは「⾼校⼊試に向けた中学3年⽣への対応」をテーマに考えていきます。

 

塾が行うべき受験指導とは

⼀般的に、志望校選択に関しては学校主体で進路指導が⾏われています。では塾としては、どのような⽴場で進路指導を⾏ったら良いでしょうか。

考え⽅はいろいろあると思いますが、塾として学校とは別の⽴場から積極的に進路指導を行うことが⼤切です。学校での進路指導は、どうしても⽣徒の学⼒に合わせて無理なく学校を割り振るといった、安全第⼀の指導になりがちです。

もちろん、そういった指導が悪いというわけではありません。しかし、本⼈や保護者の⼊試に対する意識や知識が低い場合、学校で勧められるまま安易な受験校選びをしてしまうことも事実です。もしそれによって⽣徒本来の実⼒や才能を損なうことがあったとしたら、大きな問題です。

塾としては、まず志望校を判断する材料として受験データを示し、本⼈と保護者の意思を尊重した上で、学⼒や可能性を正しく評価しながら必要に応じて高い⽬標に向かわせる指導を⽬指しましょう。

もちろん志望校のレベルを上げればその分だけリスクは高まります。高い⽬標を設定して努⼒を続けても、結果的に不合格になってしまう場合もあります。とは言え、安全第⼀の志望校選びとなれば、今度は本来の学⼒より1ランクも2ランクも下の⾼校を選ぶしかなくなるわけです。

 

生徒の未来を考えた受験指導が本来あるべき姿

結局リスクの伴わない受験というのはありえないわけです。⽣徒や保護者が本当に納得して受験したのならば高い⽬標に向けてチャレンジし、万が⼀不合格になったとしても、長い⽬で見た場合、その⽣徒にとって必ずしもマイナスとは⾔えないのではないでしょうか。

また、塾の役割は受験校の決定に関わることだけではありません。学校での進路指導に対して本⼈や保護者が弱気になっていた場合には、大いに励まして⾃信をつけてあげることも⼤切です。

そして、推薦枠などで早々に合格が決まって気が抜けている⽣徒がいたら、⼊学後の好スタートに向けての意識づけや、⼊学前に何を勉強したらよいかアドバイスしてあげることも、⼤切な受験指導と⾔えるでしょう。

いずれにせよ、⽣徒の未来を考えて本当にその⽣徒のためになる進路を⽣徒や保護者と⼀緒になって考えてあげることが、塾の⽴場での進路指導の基本と⾔えるのではないでしょうか。また、そういった親⾝な指導こそが、その塾の地域での評判を上げることにつながっていくでしょう。

 

受験指導のスタートは、明確な⽬標設定から

受験指導を行う場合、やはり早めに⽬標(志望校)を明確にさせることが重要です。⽬標が定まらないことには、⽬標に向けた努⼒も達成感もありません。受験指導においては、受験に向けた授業をするよりも前に、受験に向けた意識づけから始めなければなりません。

確実に⽣徒全員の現在の志望校を把握し、もし志望校が明確でない⽣徒がいたら、早めに⾯談などで志望校を決定させましょう。本⼈の意思がはっきりしない場合であれば、とりあえず仮の⽬標でも構いません。⽣徒と⼀緒に将来のことを考えて⽬標を決めていくという作業の中で、塾の先⽣への信頼も⾼まっていくのではないでしょうか。

⽬標がはっきりとしたら、それを短冊などに書いて教室やロビーに掲⽰するのも良い⽅法です。⽣徒の名前と本⼈の決意を書かせたり、「○○⾼校絶対合格!」などと⽣徒の名前はいれずに学校名を書かせたりしても構いません。受験に向けての⽬標(志望校)を明確にし、⽣徒の受験に対するモチベーションアップを図ることが、受験指導の第⼀歩となります。また、この決意表明は受験学年以外の⽣徒に対しても、勉強への意識づけに役⽴ちます。

 

「君なら受かる」と信じて励ますことも受験指導での教師の役割

受験指導に関して、学校の先⽣にはなかなかできない塾教師だけの特権があります。それは、「苦しくても君ならきっと受かるから頑張ってみろ」という励ましです。先にも述べたように、学校の役割には、⽣徒の進学先を上⼿に振り分けるという側⾯があります。従って志望校選択に際しても、「難しいけど頑張れ」というよりも、「難しいから別の学校にしよう」という指導になりがちです。

しかし塾の先⽣なら、安易に志望校を下げずに頑張らせるという指導ができるのです。もちろん、それは本⼈の気持ちを無視して無理な受験をさせるということではありません。出願直前まで⾼い⽬標に向けて努⼒をさせて、最終的に危ないと思えばその時点で志望校を変更しても構わないのです。早々に志望校を下げて楽な受験を決めてしまった⽣徒は、その時点から勉強に対する意欲を失い、楽に⼊れるはずの⾼校への合格すら危うくなることもあるのです。

 

⽣徒にとって受験は精神的にもつらいものです。塾の先⽣の「頑張ってごらん、君ならきっと⼤丈夫だよ」という⾔葉は、何よりも⼤きな励ましになるはずです。また、そういった励ましの⾔葉が、塾の先⽣への⼤きな信頼と、合格したときの感謝となって返ってくるのです。受験に向けた学習指導だけでなく、受験に向けた⽣徒への精神的フォローが、塾教師にできる⼤きな役割と⾔えるでしょう。

 

⽣徒・保護者を満⾜させる受験指導のポイント(2)>>後半へ続く