【教育改革で新たに問われる】
これからの子どもたちの評価「考える力」のはかり方

来年度から新しい制度による大学入試が始まり、2021年度からは中学校で新しい指導要領が全面実施となります。学習内容だけでなく教育制度そのものが大きく変わっていく中で、中学校における子どもたちの評価はどのように変動していくのでしょうか。今後の教育改革を踏まえた評価の変化について考えてみましょう。

「見えにくい力」も評価される時代へ

これまで中学校では、知識や技能など「見える力」を中心に評価してきました。ところが新しく改訂される学習指導要領では、それだけではなく「見えにくい力」にも重点を置いて評価するようになります。今の中学2、3年生は2021年にはすでに中学校を卒業しているので、関係のない話と思われるかもしれません。ですが、「見えにくい力」の育成を重視し、その力をしっかり評価していく動きはすでに始まっており、今の中学生にも十分関係しているのです。

単に「見えにくい力」と言ってもさまざまなものがありますが、文部科学省が特に重視しているのは思考力・判断量・表現力といった「考える力」です。自ら考える力がこれからの時代にでは必要であり、社会で生きていく力になると捉えており、この力を身に付けるための教育を小学校から大学まで一貫して行おうというのが、今回の教育改革での核となる考えです。

子どもたちのアウトプットを客観的に評価する仕組みが必要

「考える力」のように、見えにくい力を客観的に評価することが中学校にとって大きな課題となっています。人が今、何をどのように考えているのか、頭の中を覗くことはできません。考えた結果としてアウトプットしたものを評価していくしかないのです。とはいえ、本当に子どもが考えたのかどうかまで判断することはとても難しく、仮に丸暗記したものを書いたり発表したりしても、オリジナルの考えなのかどうか見分けることは困難でしょう。

実は、現行の学習指導要領においても、中学校の成績を「関心・意欲・態度」「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」と4つの観点から評価しており、このうちの「思考・判断・表現」が「考える力」にあたります。この項目はペーパーテストでは測りづらく、どうしても主観的な評価となってしまいがちです。
そのため、学校の現場では「考える力」を評価する方向へと進めながらも、「考える力」を共通で測れる尺度をどのように定め、客観的に評価することができるのか、いま現在も試行錯誤を続けています。

作文の内容を思考の種類で分類し、評価する試みが進行中

九州のとある大学附属中学校では、パフォーマンス評価の手法と取り入れることで「考える力」を評価する試みを行っています。パフォーマンス評価とは、ペーパーテストだけでは測りにくい力をプレゼンテーションや作品、作文などで多面的に評価していくことを指します。この中学校では、例えば子供の作文や発表内容が、どういった思考の型を用いて表現しているのかを分析します。

具体的に言えば「比較する」「分類する」「関連付ける」「類推する」など、10種類に分けた思考の型を用い、先生が「ここは比較の視点で考えているな」「ここは抽象的な内容を具体化しているな」などと分析し、思考力を評価しています。これを先生だけが行うのではなく、子ども自身で、どの思考の型を使ったのかを自己評価しています。ですが、これを一人ひとりに対して行うには相当な時間がかかりますし、先生のスキルや経験も必要となってくるため、一般の学校ですべての先生が行えるようになるには、時間が必要かもしれません。

「考える力」はこれからの時代に必要不可欠な力
評価にかかわらず力を身に付けていくことが大切

「考える力」が上手に大学入試や学校で客観的に評価されるようになるには、もう少し時間がかかるのは事実ですが、その力を教育現場で育成し始めていることもまた事実です。ですから、学校で「考える力」がどのように評価されるかにかかわらず、身に付けていくこと自体は必要なのです。

今までは一つの正解に向かって、最短距離・最短時間でたどり着くことがゴールでした。しかし、これからは、将来の予測が困難な複雑で変化の激しい社会を迎えると考えられており、正解は複数、あるいは正解がないことすら考えられます。
つまり、これまでのように解決パターンだけ覚えていても通用しない時代となれば、試行錯誤しながら自分なりの答えを見つけていかなければなりません。そのとき、思考のプロセスを知らなければ、何もできないということになってしまいます。だからこそ、「考える力」は必要なのです。また、これまでは誰かが「課題」を用意してくれて、それを解決するという前提がありましたが、これからは課題そのものを探索するところから必要となることすら考えられ、そういった意味でも「考える力」が重要になります。

中学校でも、今後はいっそう「考える力」を身に付けるための授業は増え続け、それを正当に評価するための取り組みが行われていくでしょう。その取り組みを見守るのではなく、保護者や生徒から学校での情報を小まめに採取し、塾として「考える力」を身に付けるための授業確立を目指していただきたいと思います。

【生徒の背中を後押し!】
「正解のない時代」を進む子どもたちへの問いかけ

今の時代は時々刻々と変化しています。以前は考えられなかったことを簡単にやってのけるなど、やろうと思えば何でも実現できるツールであふれています。以前の当然が今では「当然」ではなく、これからも変わり続けるのです。

「答えが一つではない」と気付かせる

テストで出される問題に、いかに正しい答えを書くかが大切だと思う生徒はたくさんいるでしょう。正しい答えは一つしかなく、それは必ず先生が持っている。それを言い当てられることこそが、素晴らしい人間である、と。
人間生活でも、果たしてそうでしょうか。何が正解で何が不正解であるのか、そんなことは誰にも分かりません。やりたいことをやるための答えは『一つではない』のです。そして、その答えは『自分の中にしかない』のです。そこに気付くことができて初めて、自らに可能性を感じることができるのです。

「外国の教育現場を実際に見てみたいが、お金がない」と言っていた学生が、クラウドファンディングによりたった3日で目標金額を集めてしまったという実例があります。お金がない中で「どうすれば実現できるのか」と可能性を探っていくうちに、このチャレンジを思いついたそう。手段として、企業が企画したツアーというものもある中で、完成されたツアーという形ではなく、自分たちの夢のために自分たちで一から企画して実行したいという思いが強かったのでしょう。そんな彼らの行動力に、多くの大人や学生が触発されて、出資をしたのです。

こうして、夢をかなえる方法やその答えが一つではないと気付いたとき、一歩踏み出す勇気と行動が湧いてくるのです。その効果には非常に驚かされます。

「正解がない」質問を投げかけ続ける

こうしたように、「自分がやりたいことを可能にしていく力」こそが、「考える力」を育み、将来幸せな人生を歩むためには必要な力ではないかと考えます。この力を子どもたちから引き出すために、私たちにできることは何でしょうか。「こうしなさい」と、こちらが過去の体験に基づいて持っている「答え」を子どもに与えることではありません。「正解がない」質問を投げかけて、自分で考える力を育てていくことではないでしょうか。

 

例えば
「10年後、どんな大人になっていたい?」
「大人になったときに、どんな気持ちでいたい?」
「人生でこれだけはやってみたいと思うことは?」
「それを実現するにはどうすればいいと思う?」
「どんな方法が考えられるかな?」
「他にはどんな方法があると思う?」
「今できることは何だろう?」

これらの質問の「答え」はすぐには引き出せないかもしれません。大人になったとしても、答えが見つからないかもしれません。それは、これまでにこのような質問をされてこなかったので、考える習慣がなかったに過ぎません。単に慣れていないのです。
「答え」が出たとしても、途中で迷いが生じるかもしれません。「答え」が変わるかもしれません。それでも良いと思います。価値観が多様化している「正解のない時代」において大切なのは、雄一絶対の「正解」にたどり着くことではなく、自分なりの「答え」を探求し、チャレンジし続ける習慣を身に付けることなのです。
これからますます子どもたちには「答えは一つでない」ことを伝えつつ、「正解のない」質問をどんどん投げかけていってください。