【一体どう変わる?】
改訂間近の「新学習指導要領」を再確認

 来年から学習指導要領が改訂されるのは、皆さんご存じだと思います。2020年は小学校、中学校は2021年、高校は2022年から新しい学習指導要領が実施される予定です。およそ10年に1回のペースで改訂されてきた学習指導要領ですが、次回の改訂は今まで以上に大きく変化していると言われています。
 ではどのように変わっていくのか、改訂直前のいま、再確認してみましょう。

「何を教えるか」から「何ができるようになるか」へ

 従来の学習指導要領は「どの学年で、どの教科で、何を教えるか」と教科指導を中心に定められてきました。今回の改訂では、子どもたちにどのような力を身に付けさせるか、言い換えれば「何ができるようになるか」というところまで踏み込んでいます。
 以下の図は文部科学省HPに掲載されている「育成すべき資質・能力の三つの柱」です。今まで「学んだことを理解しているか」(知識・技能)の大きなウェイトを占めていた『学力』の評価は、これから変わっていくでしょう。

 知識や技能を習得するだけではなく、そこからどのようにして自分で考え、表現し、判断していき、社会で役立てていくことが求められています。言い換えれば、学習したことをどのように使って、それをもとに社会と如何に関わっていくのか、そこからどのように豊かな人生を送っていくのかといったところまで、これからの時代では必要となる能力であるでしょう。
 しかし数値化できないこれらが、どのように評価されていくのか、まだまだ見守る必要があります。

では「どのように学ぶのか」を考える

 では、上記の3つの力を身に付けるために、どのように学ぶのか、そこにも新学習指導要領では触れています。学習指導要領改訂における検討資料では、「主体的・対話的で深い学び」といったキーワードが出てきます。では、「主体的・対話的で深い学び」とはいったいどういったことなのでしょうか。

1.主体的な学び

学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる。

2.対話的な学び

子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める。

3.深い学び

習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう。

※文部科学省Webページより

 この「主体的・対話的で深い学び」を行うための手段の一つとして、「アクティブ・ラーニング」が挙げられます。アクティブ・ラーニングとは、教師による一方的な指導ではなく、生徒による体験学習やグループ・ディスカッション、ディベートを中心とした授業を指します。学んだことや考えたことを、意見交換しながら、より深く理解したり、自分の考えを見つめ直したりしていく、そのような授業は今後さらに増えていくことが考えられます。

教科や科目の新設
その中で改めて注目される「基礎・基本」について

 次の学習指導要領では、小学校高学年で「英語」が正式教科となり、高校では「公共」「地理総合」「歴史総合」などの科目を新設予定です。中学校での教科の枠組みに関して大きな変化はありませんが、先述の通り、授業の進め方は大きく変わっていくことが予想されます。

 アクティブ・ラーニングを取り入れた授業の増加や、大学入試で今後面接や小論文が重要視されるといった話を聞くと、「知識・技能は問われないのか」と今までの教育を疑問視されるかもしれません。しかし、文部科学省は「学習指導要領改訂に伴う学習内容の削減は行わない」と明言しています。これまで同様、知識や技能は大切であり、特に「基礎・基本」の定着は重要視されます。

 例に挙げると、高校で新しい科目となる予定の「歴史総合」は、「日本史」「世界史」の両面から「近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉え、資料を活用しながら歴史の学び方を修得し、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察、構想する科目」と位置付けられています。このような授業では、日本史・世界史それぞれをしっかりと理解できていないと対応が難しくなります。また、授業内での話し合いでも、相手の発言を理解し、自分の意思を伝える中で知識・技能は必須です。

 先に述べた3つの学力の習得のためにも、知識や技能の基礎・基本の定着を欠かすことはできません。これら土台があってこそ、「使う力」や「社会で生かす力」へつながります。知識を生かす場面において「知識が不足している」と感じるならば、さらに必要な知識を身に付けるために学習する、といったサイクルにも結び付きます。こうしたことから、今後も変わらず重要となるのは、身に付けるべき知識の基礎・基本をしっかりと習得する、といった姿勢ではないでしょうか。

【生徒の背中を後押し!】
入試改革に備えて、日々の会話にもトレーニングを取り入れる

 いよいよ来年度から大学入試も大きく変わります。単に知識を問うだけではなく、思考力や判断力、表現力が問われるようになるといったことは先生方はご存じと思いますが、では、一体どのようにどのような勉強をさせたら良いのでしょうか。

答えが一つではない質問を投げかける

 例えば、教室で生徒と雑談をしていたとします。話題は、授業をしている他の先生。その先生が、突然笑い出しました。すると生徒が質問してきます。

 

生徒:「どうして、あの先生は笑っているの?」
先生:「教えている生徒が冗談を言ったからじゃないかな」

 

 そこでこちらの解釈をすぐに答えてしまうと、生徒はよほど興味関心がないと、それ以上深く考えることはありません。まず、こちらの考えを述べる前に、生徒にも質問してみましょう。

 

先生:「どうしてだと思う?」

 

 質問されることで、思考が巡り始めます。
「あの子が冗談を言ったからかな」と生徒が応えても、さらに探求を促してみます。
「そうかもね。どんな冗談を言ったんだろう?」

 このような些細なやり取りの中でも、目の前の事象を観察し、いろいろな角度から考え、自分の言葉で表現しようとします。
 正解が何かは当人同士でしか分からないことですが、見出す答えより、答えが一つではない物事について、対話をする機会や、答えを見出そうとするプロセスが重要です。そうしていくことで、自分なりの見解を述べる習慣が自然と身に付いていきます。

課題を解決する形の質問を投げかける

 次の例として、忘れ物が多い生徒への対応について考えてみましょう。最近、特に多いようですが、どのように対応しますか。

 

 つい、「今日も忘れ物があったよね。ちゃんと、塾に来る前に持ち物を確認して来て!」と、こちらから解決策を指示してしまっていませんか。しかし、それでは、自分で解決する力を養うことはできません。ここでも、質問してみましょう。

 

先生:「どうしたら、忘れ物をしなくなると思う?」

 

 自分で解決策を編み出すよう促すのです。生徒が自分で考えた方法でやってみます。そうして忘れ物がなくなれば、その方法は解決策として機能したわけですが、それでも忘れ物がなくならないのであれば、適切な解決方法ではなかったということになります。その場合、再度、課題解決に焦点を当てた質問をして、思考を促します。

 

「どうすれば良かったと思う?」
「他の方法でやってみるとしたら、どんな方法があるかな?」
「誰かに協力をしてもらうとしたら、どうする?」

 質問を投げかける対話は根気のいる作業です。「こうしなさい」と言ってしまった方が早いこともあるでしょう。しかし、それでは考えることをさせず、こちらが持っている「答え」を与えているに過ぎません。誰かが導き出した答えや教科書の暗記だけでは、これからの入試は乗り切れません。日頃から自ら考え、言葉にする習慣を持つことは、今後の入試対策としてきっと役立つでしょう